
なお「Tokyo Trilogy」は、キヤノングローバル戦略研究所外交安全保障チームの宮家邦彦(元外交官)、神保謙(青学)、辰巳由紀(Stimsonセンター)が、「3人で語る東アジアの安全保障」と題し、様々な話題や論点を随時発信するサイトです
辰巳さんは今回、Marshall氏らがNATO軍とワルシャワ条約軍の対峙様相を検討した際のエピソードを取り上げ、その中の「ハンブルグぶん獲り(Hamburg Grab)」シナリオが、「今の東シナ海で日本にとって一番やっかいなシナリオとだぶります」と紹介しています
28日付「Tokyo Trilogy」で辰巳さんは(概要)

●Marshall氏らが反論する部分に読みごたえがあるのはもちろんですが、私(辰巳さん)が気になるのは、想定されたシナリオの一部として挙げられていた「ハンブルグぶん獲り(Hamburg Grab)」シナリオ。
●このシナリオは、「敵」であるワルシャワ条約機構側が、緒戦で東西ドイツの国境から近い西独の主要都市であるハンブルグのみを短期決戦で制圧し、その後停戦を申し出る、というもの。
●ワルシャワ側にとっては、「短期」で小さいながら成果を上げ、同時にNATO軍が核兵器使用にまで事態をエスカレーションさせるリスクを下げることができるシナリオ。
●この「ハンブルグぶん獲り」シナリオ、最初の一手が「低烈度」「短期」「限定的」であるところが、なんとなく、今の東シナ海で日本にとって一番やっかいなシナリオとだぶります
●また、この手の本を読むともうお約束なのですが、この本にも日本専門家はおろか、アジア専門家が誰一人として登場しないのも、非常に興味深い
Andrew Marshall氏と伝記について

●その間、彼の下で薫陶を受けた多くの戦略家がこのネット・アセスメント室から輩出されました。伝記「The Last Warrior」は、Marshall氏に薫陶をうけたシンクタンクCSBAのクレピノビッチ理事長とワッツ同主任研究員の二人の共著で出版されました
●1970年代以降の米国の戦略がどのようにして形成されてきたのかを知る手がかりとしては、必読書かと
●ちなみに、Marshall氏の後任はなんと米政府専用の求職サイトで「公募中」。2月末で〆切なんですけど、「後任の室長が見つからないから、この部屋は解散ね」に向けたアリバイ作りなのでしょうか
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世界の目線で、日本や東アジアを「語る」貴重なサイトですので、一度覗いてみてはいかがでしょうか。
いつも「高烈度」「短期」「大規模」な中国軍戦略・戦術を訴えているので、今回のような「低烈度」「短期」「限定的」な洗練された視点には大いに考えさせられます
だからと言って、戦闘機命や陸自の組織防衛には組しませんが、「尖閣だけぶんどり」シナリオ等にも思いを致しましょう。
ところで・・・
冷戦時には、ソ連が東欧に中距離ミサイル「SS-20」を配備したことで、米国と欧州NATO諸国間に「デカップリング論争」を引き起こしました。
中国のA2ADは、そんな「同盟引き裂き効果」たっぷりなような気がします
辰巳由紀さん関連の過去記事
「靖国参拝に日米最前線の声」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-07
「オバマ政権のAsia担当は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14-2
「強制削減DCの雰囲気は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09
「強制削減を再整理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-28
伝説の戦略家:A.マーシャル氏
「Andrew Marshall氏が引退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-18-1
「Marshallとルトワック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-17
「存亡の危機国防省ONA」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16
アマゾン.COMの「The Last Warrior」ページ
→http://www.amazon.co.jp/The-Last-Warrior-Marshall-American/dp/0465030009