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F-22に学べ:F-35が低酸素症で飛行停止

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後手後手だったF-22事態対処の教訓に学べ!

F-35 luke AFB2.jpg9日、米空軍ルーク基地の第56航空団司令官は、5月2日以来、同基地の異なる飛行隊で5件発生しているF-35操縦者の低酸素症のような症状を理由に、同基地でのF-35の飛行を1日だけ停止しました。

9日の金曜日だけ飛行停止にし、同基地所属のF-35操縦者に同様の症状が出た際の対処要領の再教育や医師からの説明を行い、更に操縦者を集めて自由に懸念を発言させる場の設定などを今後計画するようですが、12日月曜日には飛行を再開するようです。

Winter新室長が就任したばかりの国防省F-35計画室も事態を重視し、既に広範な関係者(製造企業や整備関係者、機体構造の学者、航空生理学の医師団、国防省や海軍)を絡めた調査枠組みを立ち上げて対応しているようですが、原因特定には至っていません。

Winter2.jpg他基地で同様の事象が発生していないことから、飛行停止はルーク基地だけで、約1週間後のパリエアショーへのヒル空軍基地からのF-35参加も予定通りとのことのようですが、何となくコソコソと事態を収めようとしている印象をぬぐえませんし、同様のコソコソ対応で大失敗したF-22の低酸素症対応を想起させます

米軍や国防省F-35計画室がしっかり対応することを期待しつつ、過去の苦い教訓「F-22事案」を振り返り、F-35事案の推移を見守る参考としたいと思います。早い段階から大きく構え、小さく収める・・・これが教訓だと思います。コソコソはいけません


F-22事案(2008年4月から2012年7月)
F-22Hawaii2.jpg2008年4月から、低酸素症のような症状を訴える操縦者が10件以上報告され、部隊で問題に。具体的症状としては、操縦者が無線周波数の変更を記憶していない、飛行高度が低すぎて機体を木に擦る等が報告されていた。
●当初は酸素生成装置(OBOGS)のフィルターの問題かと言われたが、パイロットの血液中から検出された「有毒ガス」、「プロパン」、「燃焼した不凍液の残留物」等がどこから混入したかが不明で、また一酸化炭素中毒の可能性も残されていた。

●このように原因が特定できない中ではあったが、米空軍は、今回のF-35事例と同様に、代替の酸素供給装置が機体に装備されていたこと等もあり、低酸素症への対処要領を教育する等の対処で飛行を継続していた
●F-22部隊内で懸念の声がくすぶる中、2010年11月、アラスカ上空で飛行訓練中のF-22による原因不明の墜落事案が発生しパイロットが死亡した。パイロットの最後の交信が「酒に酔ったような口調」で低酸素症の症状に酷似していたことで疑念が拡大。

2011年5月3日、米空軍は全てのF-22の飛行を停止し、原因究明と対策を指示。同年8月、空軍参謀総長が2010年11月のアラスカでの墜落と酸素生成装置とは関係ないと結論を発表。
●2011年9月19日米空軍は、酸素生成装置に関する根本的な原因究明は未完だが、継続的に追加の点検を行いつつ、リスクを低減させる炭素フィルター追加措置や脈拍異常警報装置携行の義務付け、運用規則改正、更にパイロットの血液サンプル事前採取や再教育を行い、ベテラン操縦者から段階的に飛行を再開すると発表


見切り発車の飛行再開が操縦者の反乱を
F-22 refuel.jpg長期間に及ぶ飛行停止で、操縦者の技能維持が切実な課題となっていることを受けた判断だったが、「飛行再開後も異常を察知した場合は、基地単位で柔軟に運行を中止することが出来る」としており、極めて強い不満や懸念をF-22部隊内に生むことになる
●実際、同年11月にはラングレー基地で低酸素症のような事態が生起し、同基地だけ5日間ほどF-22を飛行停止にする措置を行うなど、各地で同様の事象が止まず。また結果的に酸素装置と関係のない事象まで、低酸素症が原因とのうわさが拡散する事象が続発し、部隊の混乱が続く。

2012年5月、TV人気番組「60 Minutes」に2名のF-22操縦者が許可なく出演し、低酸素症事案や空軍の対応に不満を示し、「F-22での飛行が不安。操縦機種を変わりたい」と発言。米空軍内外で大きな問題
●2012年5月15日、当時のパネッタ国防長官がF-22に飛行制限(高々度飛行の制限と基地から30分以内での飛行義務)を課すと発表

●同年5月24日、パネッタ国防長官がF-22に課していた飛行制限の段階的解除を了解。これを受けF-22部隊が嘉手納基地へ長時間洋上飛行を伴う部隊展開を行うと発表。
●併せて国防省報道官が、F-22操縦者に生じる低酸素症のような症状は、操縦者が高々度飛行時に着用するベストに装着された(酸素供給用の)欠陥品バルブとフィルターによって引き起こされたモノだと結論づけ、問題のベストは交換され、フィルターは取り除かれると発表
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F-22-wake.jpgF-22は2005年から運用開始していますが、その3年後から問題が認識され、6年後から本格的に問題視され、7年後にやっと問題が解決されています。

この問題により、運用開始から海外派遣や長時間フライトが制限された時期があり、やっと実戦デビューを果たしたのは2014年秋、シリア国内の対IS作戦の緒戦に投入されるまで待つことになります

軍事メディアでは、2011年のリビア作戦にB-2爆撃機が投入されながら、なぜF-22が投入されないのか様々な憶測を呼びましたが、この低酸素症問題が大きく影響していたことが後に明らかになっています。

このF-22の経験は、米空軍のみならず国防省全体で記憶に新しいところでしょうから、今回のF-35事案に十分生かしていただきたいと思います。

特にルーク空軍基地は、日本をはじめ諸外国の操縦者を含むF-35操縦者養成の「メッカ」ですから、安全対策は万全を期していただきたいと思います

F-22事案を振り返る
「最終的に飛行再開・原因特定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25
「不沈F-35と低酸素F-22」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09
「F-22再度飛行停止と再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-24
「F-22操縦者に謎の症状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-31

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