
そして電気系統ケーブルが摩耗して「ささくれた:chafe」原因として、ケーブルを固定するはずの留め具(bracket)が緩んでケーブルが揺れ動く状態になったためと説明しました。
ここで驚くべきは、当該「留め具」の不具合は以前に判っており、現在製造中の機体には対策済みの留め具が使用されているものの、製造済みの機体は順次留め金を交換している状態であり、未交換の機体は当該部分を点検しながら飛行を継続しているとの説明があった点です

F-35に関しては、空軍型のF-35Aも9月23日に機体後部から火災を起こし、その原因は未だ調査中で明らかになっていませんが、同型機は何の問題も無かったように飛行を続けています。これも「承知の上のリスク」なんでしょうか???
これ以上試験期間を延長して経費増を招くと議会等からの非難に耐えられないと判断した国防省が、安全上のリスク許容範囲を恣意的に拡大し、無理矢理試験を強行継続しているように私には思えてなりません。
2014年6月のエンジン火災の時には、2ヶ月間飛行停止の措置が執られていたことを思えば特に・・・
F-35計画室長Bogdan中将の発言

●しかし、火災を起こした機体は、まだ新しい留め具に交換していなかった。そこで定期的に当該留め具がきちんと機能しているか点検し、飛行を継続していた
●当該機体の当該留め具は、最近の点検で問題なかったが、緩んで機能しなくなったようだ。本件に関しては、査察チームを部隊に送り込んで調査を行っている
●(留め具を交換せず、リスクを背負って飛行していたのかとの質問に対し、)そうである。(この様な)承知の上のリスク(acknowledged risks)は幾つかあり、その一つに過ぎない。留め具の交換が完了するまでは、未交換の機体の当該部位を定期的に点検し、飛行中問題ないことを期待しながら飛んでいる
“Yes, there are acknowledged risks, and that would be one of them,” he said. “And until you fix that bracket, every airplane in the B-model that doesn’t have that bracket is going to have to be inspected, and hopefully that bracket remains in place when it’s flying.”
Defense-Tech記事はBogdan中将発言を
●我々は(飛行前に)点検し、問題ないように見えた。しかし飛行したら良くなかったのだ。全ての軍用機はリスクを抱えている
●当該留め具の交換が完全に終了するのが何時になるのか、未交換の機体が何機あるのかには言及しなかった
空軍型F-35の火災原因は未だ不明
(20日付Defense-News記事より)

●またこの火災関連で、飛行停止になった機体は全くない
●この火災の原因については数ヶ月後に明らかになると思われる。20日にDefense Newsが米空軍報道官に確認したところ、米空軍教育訓練コマンド司令官Roberson中将が、事故調査委員会AIBの設置を決断した模様
●通常AIBは、初期の事故調査が終了してから立ち上げられ、事故原因に関するレポートをまとめることになる
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折しも、2017年末には終了すると言われていた開発試験(SDD)を少なくとも数ヶ月延長せざるを得ない事が確実で、議会から猛烈な非難を浴びている最中でもアリ、安全軽視で試験を進める動機は十分にあります。
ちなみに、10月27日に発生した飛行中の火災は、11月7日にメディアが報じるまで、事実上隠されていたことも付言しておきます。
海兵隊F-35は来年1月に岩国に展開しますし、航空自衛隊のF-35操縦者訓練もルーク空軍基地で間もなく開始されるはずです。
「承知の上のリスク」と言われても、誰が承知しているの?・・・と声を荒げて確認したくなる「亡国のF-35」です
最近連続するF-35の火災
「10月27日の海兵隊機火災」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-09
「9月23日の空軍機火災」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24
2014年6月のF-35エンジン火災(当時は2ヶ月間飛行停止)
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08