17日付Defense-Newsは、16~18日の間にアラバマ州で開催された「宇宙&ミサイル防衛シンポジウム」の様子を紹介し、米軍や米国防省だけでなく専門家や研究者から、超超音速飛翔兵器(hypersonic glider weapons)への対応の難しさや課題について発言が相次いだ模様です
超超音速飛翔兵器とは、弾道ミサイルと異なり「大気圏内」を音速の5倍以上で飛翔する兵器で、スクラムジェット等を推進装置として使用する兵器ですが、発見、識別、追尾、対処方針決定、迎撃のいずれの段階をとっても、現状の防空やミサイル防衛体制では対処が困難だとされています
更に本分野の有効性から、ロシアや中国も開発と実験を進めており、米国としては兵器そのものの開発と防御態勢を同時に考えなければならなくなっていると危機感を訴えル発言が相次いでいます
Work国防副長官が推進する「第3の相殺戦略」でも、この超超音速飛翔兵器を重視しており、細部は不明ながら様々な研究検討が進められている模様です
17日付Defense-News記事によれば
●「Space and Missile Defense Symposium」のメインテーマの一つに挙げられた超超音速飛翔兵器の課題について、米陸軍省調達次官から米戦略軍司令官まで、各方面から発言が最初の2日間を埋め尽くし、皆が危機感をあらわにした
●Haney米戦略軍司令官は、「超超音速飛翔兵器の研究開発は非常に挑戦的な課題であるが、この兵器を発見、識別、追尾、迎撃する事は兵器開発以上にますます困難になっている」と表現した
●大気圏内を飛翔する本兵器は(弾道ミサイルに比して)レーダーによる探知範囲が限られ、高速である事から対処の余裕時間がない。更に飛翔体は高機動が可能で、目標に精密誘導出来る点も大きな脅威となっている
●多くの防空センサー網は超超音速兵器と異なる飛翔パターンを想定して構築されており、音速の5倍以上の速度で、しかも目標直前でも柔軟に機動する目標をほとんど想定していない
●Haney司令官は、「同兵器を良く分析して異なる対処を考える必要がある。センサーを最大限に活用し、どのように飛翔しているかを見極め、どう対処すべきかを短時間に処置する必要がある」と語った
●ロシアは最も本分野で進んだ技術を保有する国の一つだが、西側のミサイル防衛網を突破する目的で開発を進めており、「今年4月にICBMであるSS-19の先端に装着して打ち上げ、超超音速飛翔に成功したと報道された」と専門研究者は発言した
●中国も力を入れており、最近2年間で6回も実験を行っている。専門家によれば、中国の試験で超音速飛翔体が高度な機動性を見せた模様
ミサイル防衛長官や米陸軍次官は
●James Syring米ミサイル防衛長官(海軍中将)は、「本兵器は迎撃兵器に関する課題を提示するだけでなく、今後兵器の発展に伴い世界をカバーするセンサーの課題を提起する。そして迎撃兵器よりも、センサー面でより課題は大きくなるだろう」と語った
●そして同長官は、「究極的な解決は宇宙に求めるべきだろう。継続的な追尾、識別のためには宇宙の活用が求められる」と指摘した
●Katrina McFarland米陸軍調達担当次官は、「次元の異なるような課題に直面している。目標発見から攻撃までの時間短縮が最大の課題で、対処の指揮統制をどのように行い、この様な高速目標対処に既存システムをどう連接して対処するかが大きな悩みである」と語った
●また同次官は、米陸軍がセンサーと迎撃体の双方の視点で技術検討を進めており、より余裕を持ってバランスのとれた対処が可能となるよう努力している。
●しかし本件は個人的にも最大の課題の一つで、かつ米国防省にとっても、今後数年間で最も大きな課題の一つとなろうとも同次官は表現した
●そして、米国が本分野の技術で優位ではないと言うつもりはないが、米国の優位を維持することが死活的に重要だと強調し、国防省を上げて対処法を深く広く精力的に検討しており、近い将来にはどの対処法を選択すべきがを明らかに出来るだろうとも同次官は語った
●同次官は対処法の検討状況については細部を語らなかったが、軍需産業界や研究者、作戦運用担当者とともに、どのように対処し、どんな技術が必要か、又は洗練させるべきかを検討していると表現した
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数年前、予算の強制削減を見据えた研究開発費縮小検討の中で、当時の実験成果が良くなかった超超音速飛翔兵器(hypersonic glider weapons)は、継続的な予算確保が十分出来ませんでした。空軍も取り組んでいましたが、その後の動静が聞こえてきません
そんな中、露中が力を入れて成果を出し始めて危機感が高まり、「第3の相殺戦略」で重視項目に取り上げられて今日を迎えているようです
関係者の「予算獲得キャンペーン宣言」とも解釈可能でしょうが、上記で述べられた問題や課題は全くその通りで、兵器として使用できれば世界即時攻撃構想(PGS)を実現出来ますが、逆に相手が手に入れれば、弾道・巡航ミサイルの脅威を遙かに上回る「Game-Changing」な兵器となる可能性もあり、今後ともフォローが必要と考えています
Hypersonic技術関連の記事
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11
「米空軍30年構想に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-31
「あのLM社も積極投資」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
超超音速飛翔兵器とは、弾道ミサイルと異なり「大気圏内」を音速の5倍以上で飛翔する兵器で、スクラムジェット等を推進装置として使用する兵器ですが、発見、識別、追尾、対処方針決定、迎撃のいずれの段階をとっても、現状の防空やミサイル防衛体制では対処が困難だとされています
更に本分野の有効性から、ロシアや中国も開発と実験を進めており、米国としては兵器そのものの開発と防御態勢を同時に考えなければならなくなっていると危機感を訴えル発言が相次いでいます
Work国防副長官が推進する「第3の相殺戦略」でも、この超超音速飛翔兵器を重視しており、細部は不明ながら様々な研究検討が進められている模様です
17日付Defense-News記事によれば
●「Space and Missile Defense Symposium」のメインテーマの一つに挙げられた超超音速飛翔兵器の課題について、米陸軍省調達次官から米戦略軍司令官まで、各方面から発言が最初の2日間を埋め尽くし、皆が危機感をあらわにした
●Haney米戦略軍司令官は、「超超音速飛翔兵器の研究開発は非常に挑戦的な課題であるが、この兵器を発見、識別、追尾、迎撃する事は兵器開発以上にますます困難になっている」と表現した
●大気圏内を飛翔する本兵器は(弾道ミサイルに比して)レーダーによる探知範囲が限られ、高速である事から対処の余裕時間がない。更に飛翔体は高機動が可能で、目標に精密誘導出来る点も大きな脅威となっている
●多くの防空センサー網は超超音速兵器と異なる飛翔パターンを想定して構築されており、音速の5倍以上の速度で、しかも目標直前でも柔軟に機動する目標をほとんど想定していない
●Haney司令官は、「同兵器を良く分析して異なる対処を考える必要がある。センサーを最大限に活用し、どのように飛翔しているかを見極め、どう対処すべきかを短時間に処置する必要がある」と語った
●ロシアは最も本分野で進んだ技術を保有する国の一つだが、西側のミサイル防衛網を突破する目的で開発を進めており、「今年4月にICBMであるSS-19の先端に装着して打ち上げ、超超音速飛翔に成功したと報道された」と専門研究者は発言した
●中国も力を入れており、最近2年間で6回も実験を行っている。専門家によれば、中国の試験で超音速飛翔体が高度な機動性を見せた模様
ミサイル防衛長官や米陸軍次官は
●James Syring米ミサイル防衛長官(海軍中将)は、「本兵器は迎撃兵器に関する課題を提示するだけでなく、今後兵器の発展に伴い世界をカバーするセンサーの課題を提起する。そして迎撃兵器よりも、センサー面でより課題は大きくなるだろう」と語った
●そして同長官は、「究極的な解決は宇宙に求めるべきだろう。継続的な追尾、識別のためには宇宙の活用が求められる」と指摘した
●Katrina McFarland米陸軍調達担当次官は、「次元の異なるような課題に直面している。目標発見から攻撃までの時間短縮が最大の課題で、対処の指揮統制をどのように行い、この様な高速目標対処に既存システムをどう連接して対処するかが大きな悩みである」と語った
●また同次官は、米陸軍がセンサーと迎撃体の双方の視点で技術検討を進めており、より余裕を持ってバランスのとれた対処が可能となるよう努力している。
●しかし本件は個人的にも最大の課題の一つで、かつ米国防省にとっても、今後数年間で最も大きな課題の一つとなろうとも同次官は表現した
●そして、米国が本分野の技術で優位ではないと言うつもりはないが、米国の優位を維持することが死活的に重要だと強調し、国防省を上げて対処法を深く広く精力的に検討しており、近い将来にはどの対処法を選択すべきがを明らかに出来るだろうとも同次官は語った
●同次官は対処法の検討状況については細部を語らなかったが、軍需産業界や研究者、作戦運用担当者とともに、どのように対処し、どんな技術が必要か、又は洗練させるべきかを検討していると表現した
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数年前、予算の強制削減を見据えた研究開発費縮小検討の中で、当時の実験成果が良くなかった超超音速飛翔兵器(hypersonic glider weapons)は、継続的な予算確保が十分出来ませんでした。空軍も取り組んでいましたが、その後の動静が聞こえてきません
そんな中、露中が力を入れて成果を出し始めて危機感が高まり、「第3の相殺戦略」で重視項目に取り上げられて今日を迎えているようです
関係者の「予算獲得キャンペーン宣言」とも解釈可能でしょうが、上記で述べられた問題や課題は全くその通りで、兵器として使用できれば世界即時攻撃構想(PGS)を実現出来ますが、逆に相手が手に入れれば、弾道・巡航ミサイルの脅威を遙かに上回る「Game-Changing」な兵器となる可能性もあり、今後ともフォローが必要と考えています
Hypersonic技術関連の記事
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11
「米空軍30年構想に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-31
「あのLM社も積極投資」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1