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欧州を主戦場に宇宙&サイバー演習開始

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Schriever Wargame4.jpg9日付米空軍宇宙コマンドのプレス発表によれば、11日から第9回目のサイバー&宇宙机上演習「Schriever Wargame」が、コロラド州コロラドスプリングスのSchriever空軍基地で開始されました。

複数の米軍主要コマンドや情報機関のほか、国務省や運輸省や商務省や国土安全保障省等が参加し、何が起こっているのか、誰がやっているのか不透明な宇宙&サイバー世界の「頭の体操」を行います
なお、今回は血の同盟関係にあるアングロサクソン系のカナダ、豪州、NZ、英国も同演習に参加します。日本も入れたら同盟国として一人前でしょうが・・・

プレス発表によれば、今年の演習の焦点は「米欧州軍の担当エリア」だそうで、想像ですが、ロシアが宇宙&サイバー空間で様々に引き起こす事態に、関係機関が協力して対処する訓練となるのでしょう

Schriever Wargame2.jpgまあ・・訓練の前段階として、サイバー&宇宙攻撃を受けた際、どのような現象が起きるのか、何処にどのような影響が出るのか、何が問題なのか、関係機関の間でどのような連携が必要なのか・・等々を参加者みんなで確認することが主になると「勝手に」想像しています

なにせ、サイバー&宇宙分野では、影響が広範に及ぶ割には、「誰が何処まで仕切るのか」や「誰にどれだけ権限があるか」等々について、あまりにも米国として(当然日本もですが)不明確な部分が多く、国防省や軍事専門家や議会からは政府に対し、早く何示せと催促が続いている状態だと認識しています

9日付プレス発表によれば
●「Schriever Wargame」の目的は
Schriever Wargame.jpg---米軍、情報コミュニティー、民政、商業分野や同盟国等を含めた、宇宙における「強靱性:resilience」を強化する手段を特定し、
---どうしたら理想的な効果を多国籍作戦を支援する前線兵士に提供出来るかを探り、
---どのようにしたら複数ドメインに渡る紛争で、将来技術を活用して宇宙アセットを防御するかを吟味する

●同演習で使用される15のシナリオは、宇宙とサイバードメインを活用し、敵対者が戦略目標を達成しようとする事を想定している。演習はグローバルな広がりを設定しているが、焦点は欧州コマンド担当エリアである。
●シナリオには、多様な運用エリアを想定しており、軍民両方の多様な分野の指導者、計画担当者、宇宙アセット運用者とその能力に負荷を与える

●同演習には、27以上の米軍コマンドや政府機関等から約200名の文民と軍人の専門家が参加する
Schriever Wargame3.jpg参加コマンドや機関の内訳は、米空軍宇宙コマンド、陸軍宇宙ミサイルコマンド、海軍サイバーコマンド、NRO(国家偵察局)、米空軍戦闘コマンド、国防長官室、米軍欧州コマンド、米戦略コマンド、DIA、政府関係情報機関、国家航空宇宙行政局、国土安全保障省、運輸省、国務省、商務省等である
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ご参考1:2012年の同演習概要
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
●2012年5月のNATO首脳会議で打ち出された「Smart Defense構想」を推進すべく、英豪加に加え、NATOの仏・伊・独・蘭・デンマーク・トルコ・ギリシャから軍民両方の関係者が数百人参加

ご参考2:2010年の同演習の教訓
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

米軍を中心に政府機関や民間企業関係者からの600名参加者(英、豪、カナダを含む)は、米軍、民間の宇宙やサイバー企業関係者、同盟国、米国政府及び他省庁、米国情報機関を演じて参加。

大まかな演習の進捗は・・・
Schriever Wargame6.jpg●太平洋の片隅で発生した宇宙やサイバー空間関連の小さな事象を発端となり、相手(中国を想定)はそれが重大な挑発と認識。相手の対応は激しく、米側は宇宙とサイバー空間へのアクセスを遮断する強烈な先制攻撃を行う
以後双方が大規模攻撃に繰り出す。ただし相手側の作戦は事前によく練られており、意志決定も我が方に比較し格段に素早い
●宇宙やサイバー空間での作戦の推移は極めて早く、瞬く間に地球規模に拡大し、ドメイン内に封じ込めることは出来ない。冷戦時代の抑止理論は、本分野の紛争には適応できない

特徴的な事象を列挙すると・・・
●サイバーや宇宙ドメインでの攻撃は、誰が行っているのか、何の目的で行っているのかを明確に出来ない。この種の攻撃は、破壊よりも混乱を引き起こすモノととらえるべき。「戦場の霧」の濃さや厚みを増すモノと考えるべき。
●この種の紛争は極めて複雑。宇宙でもサイバー空間でも多種多様な関係者が関与している。敵対的競争者(peer)のだけでなく、ならず者国家も関与し、民間社会や商業金融社会の利害に影響を及ぼす。

Cyber-EX.jpg相手は米側のネットワークへの依存を熟知しており、弱点を突き強烈に攻撃的な姿勢を取り、よく練られた攻撃を米と同盟国に向ける。相手は攻撃時刻と場所を自由に選択し、警報を発する暇もない。米国側は意志決定や対応に時間を要し、後手に回る。
●このドメインでは「禁じ手」や「レッドライン」に関する共通認識が無く、紛争拡大の抑止が極めて困難。危機や紛争は短時間にエスカレートして同盟国を巻き込む。

●また地域の紛争を、その地域にとどめておくことも極めて困難。いったん火を付けたら、瞬く間に世界中に拡散する。
●宇宙では宇宙アセットの被害は簡単に回復できず、紛争終了後も長く影響を与える。

演習の教訓的事項を列挙すると・・
●米国等への攻撃が波及的影響を広範囲に与え、最終的に敵にも降りかかることを敵に認知させる必要がある
●宇宙やサイバー分野の戦力組成を事前に同盟国や民間・産業界を含めて把握する必要がある。
●民間や同盟国関係者が一堂に会する指揮所の設立が非常に重要であり、演習で有効性が確認できた

cybercrime1-.jpg宇宙の状況掌握が極めて重要。例えば、太陽活動によっても通信が影響を受ける事があり、状況掌握が正確でないと、敵の攻撃どうかの見極も困難。
宇宙の規範のようなモノ、つまりそれに従う者が何らかの利益を享受でき、同時にそれを犯すと摩擦や紛争の種になるとの共通認識を確立し、同時に潜在的敵対者に我の「敷居」を理解させる。

●我の宇宙やサイバー分野での政策を明確に宣言し、排他的エリア、レッドライン、最後の一線、敷居と言った概念やレベルを明らかにして相手を抑止する事も考えるべき。
●これまでの戦いのような「DEFCON」を本ドメインにも設定し、対処が自動的に行われるような態勢にすべき
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基本的には、2010年演習の状況や教訓は、今でも変わらずそのままだと思います・・・

2012年の同演習概要
「2012年の同演習概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19

2010年の同演習の教訓
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

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