
ハリス司令官のイメージは、ネットワークで結ばれた地上火力部隊が見通し外のより遠方の目標に対処するイメージで、これまでもCSBA等が提言してきたコンセプトですが、前線の作戦を預かる太平洋軍司令官レベルが具体的に言及するのは初めてだと思います。国防長官も水を向けていたかな・・・
つまり、航空基地基盤を含めて敵の攻撃に脆弱な航空戦力にはあまり期待できないので、森林や山岳地域に隠れて残存性の高い地上火力に期待せざるを得ないとの、厳しい対中国軍事環境が背景にある考え方です
一方で陸軍内には、歩兵や戦車部隊が一番との伝統的考え方があり、砲兵重視への転換には組織防衛の壁を超える必要があります
話の流れからは南シナ海対象ですが、当然、第一列島線上にある沖縄などの南西諸島も同列で議論されるべき位置取りにあります。
問題提起しただけで、今後の具体的動きにつながるかどうか不明ですが、重要な論点ですのでご紹介しておきます
5月26日付Defense-Tech記事によれば


●同司令官は、南シナ海の西沙諸島に中国軍が地対空ミサイルをを配備したことを「明確な軍事化行動」と表現し、南シナ海が海上交通にとって極めて重要な役割を担っていることを強調した上で、陸軍の役割について語った
●ハリス大将は一つの問題提起として、「地上部隊がこのドメインでアクセスや自由な移動を確保するため、何をすべきかとの問いに、米陸軍や同盟国等は向き合わなければいけない」と語りかけた
●また「この課題は単に安全保障や軍事の問題ではなく、経済的繁栄にも直結するものである。相手はこのことを理解して行動している」と訴えた
●そして司令官は米陸軍に対し、中国等の脅威を念頭に、「HIMARS:High Mobility Artillery Rocket Systems」や「Paladin 155mm artillery」を沿岸防衛システムとして活用する手法を検討するよう要望した
●ハリス司令官は、「もし上手く行けば、個別に放たれた弓に対処するのではなく、弓の射手を撃破できる」と期待を示した


●そして同司令官は、「地上部隊の大砲が公海上に砲弾を送り込み、高等な機雷を敵行動阻止のためには配置するなど、地上から海上の行動を阻止するようにならなければならない」と語った
●同時にハリス海軍大将は、この様な戦い方の革新が多くの労力を要し、司令官自身も明確な解決を持ち合わせていないと述べつつ、「陸軍兵士は海軍兵士の方がスマートだとよく言ってくれるので、この場に答えを求めてやって来た」と説明した
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「HIMARS」は、C-130にも搭載可能な車両搭載型のロケット発射機で、軽量化のため以前の「MLRS」より搭載量は少なくなっているが、射程50km程度のロケット弾6発か、最大射程300kmのMGM-140「ATACMS」短距離弾道ミサイル1発も搭載可能。海兵隊や韓国軍も装備しているそうです
→http://mmsdf.sakura.ne.jp/public/glossary/pukiwiki.php?HIMARS
「Paladin 155mm artillery」は、射程25~30kmの砲弾を発射可能な自走砲で、射程40kmで誤差10m程度のGPS付砲弾(Excalibur)も2006年から提供されているそうです
→http://www.army-technology.com/projects/paladin/

それにしてもハリス司令官は丁寧な言い方で語っていますねぇ・・・。海軍や空軍への対抗意識が強く、予算面で不遇な扱いを受けているとの意識が強い陸軍や海兵隊には、慎重な丁寧な言い方が必要なのでしょうね・・・
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